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弁護士コラム Column

固定残業代が支払われている場合に,固定額以上の残業代の請求ができるか

2020年05月28日
名古屋丸の内本部事務所 弁護士 勝又 敬介

 固定残業代とは、実際に残業があったかどうかにかかわらず、一定時間分の残業があったものとみなして、固定給として毎月支払われる残業代のことをいいます。

 固定残業代制度のメリットが、法的に見て妥当であるのかについては実のところ議論もありますが、一応企業の側には、毎月煩雑な残業時間の計算を行わないで済むこと、残業代の金額に差が無いのであれば、従業員が長時間労働を避けて業務を処理するようになり業務効率が上がる、などといったメリットがあるとされます。

 一方で、労働者側としても、毎月固定的に残業代が支払われるため、収入の安定に繋がること、効率的に業務をこなすことができれば、実際には長時間の労働をしなくとも残業代相当の給与を受け取ることができること、などのメリットがあるとされます。

 このような事情から、ある程度の長時間労働となることが想定される業種を中心に、導入している企業は多数あります。

 そもそも、労働基準法は、原則として1日8時間、週40時間を超える時間外労働や、午後10時から午前5時までの深夜労働、週1日の休日労働に対しては、割増賃金(具体的割増率は25%以上で、条件によって異なります)を支払うことを求めています(法37条1項)。

 この労働基準法の定めからすれば、固定残業代制度は一見するとこれになじまないようにも見えますが、実は固定残業代制度を明示で禁じるものではありません。

 学説上も、固定残業代制度自体が違法とされているものでは無く、どのような要件の下で制度自体が有効か、また制度が有効な場合に、個別の案件で違法な運用がされていないか、が検討の対象とされています。

 判例上も、固定残業代の制度自体が違法とされることはなく、一定の要件の下で適法とする流れが既に定着していると評価されています(国際自動車事件・最高裁平成29年2月28日他)。

 それでは、どのような要件の下で固定残業代制度は適法とされるのでしょうか。

 判例や学説により若干の差がありますが、主な要件として「固定残業代制度を採用することが労働契約の内容となっていること」「通常の労働時間に対する賃金部分と固定残業部分が明確に区別されていること」が要件とされています。

 このうち、労働契約の内容となっている、という部分は、企業と労働者の個別の合意や、就業規則での周知が必要となります。

 また、通常の賃金と固定残業部分の区別ですが、これについては企業と労働者の間で取り交わされた契約書や就業規則、給与明細等で判別できる形となっているかが問題となります。

 これらの要件に問題が無ければ、固定残業代制度自体は適法といえますが、それでは固定残業代制度があれば、どれだけ長時間労働をしても、残業代は固定残業代以上に支払われないのでしょうか。

 これについては、学説上も判例上も、固定残業代制度があっても、みなし残業時間を超えて働いていれば、別途残業代を支払う義務が企業側に生じるとされています。もっとも企業側では誤解している、あるいは誤解している風を装って残業代を支払おうとしない企業もあると思われるので、注意が必要です。

 これに対して、みなし残業時間に満たない時間しか残業していなかった場合でも、その分の残業代を返還請求は認められません。

 このため、固定残業代制度は、正しく運用されている限りは、企業側からして残業代の節約になる制度では無いとされています。

 実際に、固定残業代が本来支払われるべき残業代と比較して過小でないか、またその金額がいくらになるか、という点については、労働時間の立証の問題(詳しくは弊所の4月6日付のブログをご覧下さい)や、残業代の計算方法、残業代の時効(詳しくは弊所の2月20日付のブログをご覧下さい)等の問題も絡む複雑な問題となります。

 適正な残業代が支払われているか、疑問になった方は、よろしければ一度弁護士にご相談下さい。

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